【第1回】デザイナー経験がない人こそ 知っておきたいデザイン思考 3つのポイント
章タイムスタンプ
この動画をテキストで読む
デザイン思考は仕事にも人生にも効く
デザイン思考は、クライアントワークやSNSのマネタイズ、ショート動画、提案資料やプレゼンだけでなく、PTAのチラシや友達の手伝いなど、仕事以外の場面まで幅広く人生に効くテーマです。
しゅうへい自身も昨年ちふねこさんのデザイン思考講座を受け、見やすさを意識するようになりました。難しい編集をしているわけではなく、白文字にドロップシャドウという見やすい形を、見やすい場所に置いているだけです。台本も、漢字ばかりでなくひらがなを混ぜて字面のバランスを整えるといった工夫を積み重ねています。
カーニング(文字間の調整)のような専門用語を暗記する必要はありません。詰めすぎると見にくい、離れすぎると意味が伝わらない、といった感覚を、デザイナー以外の人こそ知っておくべきです。さらにこれからはAIがデザインを大量に作ってくれる時代なので、どう指示すれば思った通りの出力になるかを判断できることが、ますます大事になります。
講師ちふねこの自己紹介
講師を務めるのは、フリーランスでデザイナーをしているちふねこさんです。SNS運用サポートや、チラシ・バナー・ロゴ・LPなどの制作とディレクションを担当しています。取引先の7〜8割は指名やDMでの相談から仕事につながっているとのことです。
もともとデザインの専門学校ではなく工学部を卒業し、新卒で広告代理店に就職して、デザインの知識はほとんど現場で覚えたそうです。特別にセンスがある方ではなかったものの、どうすれば素敵なデザインが作れるかを自分なりに考え、言語化してきました。センスがなくてもデザインはできる、という考え方をこの講座で伝えていきます。
ラーメン屋さんの店構えで考える
最初の問いは「A・B・Cのどのラーメン屋さんに入りたいか」です。Aはラーメンという情報しかわからないシンプルな店構え、Bは豚骨ラーメンという種類や看板・メニューがわかるお店、Cは行列ができていて口コミの良さが伝わるお店です。正解はありませんが、見た目の違いだけで選ぶ人が分かれます。
ここで意識してほしいのは、私たちフリーランスや副業は「選んでもらう売る側・店側」だということです。仕事で自分を選んでもらうときも、ある程度は見た目で判断されます。本当は良いスキルがあっても、Aのように情報が少なすぎると選んでもらいにくく、誤解や不安を与える見た目だと仕事につながりません。だからこそ見た目を整えることが大切になります。
デザイン思考とは何か(5つのフェーズ)
一般的にデザイン思考は課題解決のプロセスとされ、「ユーザーの視点に立って本当の課題を見つけ、アイデアを形にしながら改善していく思考法」と表現できます。図にすると、共感・定義・アイデア発想・試作・テストという5つのフェーズを行き来する考え方です。
まずユーザーに共感して課題を探り、その課題を定義し、アプローチのアイデアをたくさん出し、試しに作ってみて、テストで検証します。PDCAサイクルと似ていますが、デザイン思考は最初に戻るのではなく、どのフェーズにも柔軟に戻ってやり直せるのが特徴です。テストでうまくいかなければ試作に戻り、課題設定が違えば定義まで戻ります。
デザイン思考ならではの特徴は大きく3つです。1つ目はユーザー起点で、自分が作りたいものではなくユーザーが何を考えているかからスタートします。2つ目は柔軟な発想で、型や枠組みにとらわれずに発想します。3つ目はプロトタイプで、いきなり完成を目指さず、失敗から改善点を見つけるために一旦形にします。
選ばれるためのマインドセット3つ
この講座では、デザイン思考を「選ばれるためのマインドセット」として捉え直します。ちふねこさん自身、なぜ指名やリピートで仕事をもらえるのかを振り返ったとき、このデザイン思考のおかげだと気づいたそうです。
先ほどの3つの特徴は、そのまま仕事で選ばれる考え方につながります。1つ目は相手目線(ユーザー起点)で、相手の目的や次のアクションを想像すること。2つ目は前提を疑う・固定観念にとらわれないこと(柔軟な発想)。3つ目はひとまず形にして改善を重ねること(プロトタイプ)で、いきなり完璧を目指さず、少しずつ完成に近づけます。
選ばれるために必要なことは「期待に応えること」
選ばれるために必要な要素には、スキルや実績、信頼関係、コミュニケーション能力、考え方や姿勢などが挙げられます。ただ、指標が何であれ、結局は「相手の期待にどれだけ応えられるか」で選ばれるかどうかが決まります。
ラーメン屋さんの例で言えば、豚骨ラーメンを1,000円以内で食べたい人にとって、Aのように中身も値段もわからない店は期待を下回るので入りたくなりません。逆にBのように味やメニュー、金額がわかれば期待を満たせるので選ばれます。仕事でも、自分が提供できる価値を示し、相手の求める最低ラインを満たせるかどうかがポイントです。
価値を示すタイミングは2つあります。1つ目は事前に見える価値(店構え)で、これが受注につながります。2つ目は実際に体験した価値(味・仕事の中身)で、これが期待を上回ればリピートにつながります。つまり「期待を事前に満たすこと」と「期待を実際に上回ること」の両方が大切です。
安心感の作り方(自分で示す・信頼を借りる)
事前に期待を満たして安心感を作る方法は、大きく2つあります。1つ目は自分で示すこと、2つ目は他人の信頼を借りることです。
自分で示すのはBのパターンです。相手がどんな情報を欲しがっているかを考え、味や値段を看板でわかるようにしたり、お店の雰囲気が伝わるようにしたりします。仕事では、相手の目的や求めていることを把握し、自分のスキルや実績、価値観を正しく伝え、見た目を整えて不安要素をなくすことが安心感につながります。
他人の信頼を借りるのはCのパターンです。行列や口コミの良さのように、詳しい中身がわからなくても「あの人が良いと言うなら」と選んでもらえます。仕事ではレビューや口コミ、紹介がこれにあたります。特にコミュニティ経由の紹介は、価値観や文化が近い人とつながりやすく、コミュニケーションも取りやすいのでおすすめです。
予想外の価値(そんなことまで/その手があったか)
期待を上回って満足感を高めるには、予想外の価値を提供します。もう一度行きたくなったお店や商品を思い出すと、その感情はだいたい2つに集約されます。「そんなことまで」という思いやりや気遣いへの感動と、「その手があったか」という新しい視点への感動です。
「そんなことまで」の例は、トレイが半分に折りたためて手を汚さずそのままかぶりつけるクレープで、欲求に先回りした気遣いに感動したそうです。「その手があったか」の例は不動産屋さんで、「都市ガスがいい」という条件の裏にある「月々の出費を抑えたい」という意図をくみ取り、ネット無料の物件を提案してくれたケースです。
満足感につながる具体的なアクションは3つです。1つ目は相手の次のアクションの手助けをすること。デザインなら、サムネイル案を送るときに競合と並んだ見え方(当て込みイメージ)まで作って渡すといった配慮です。2つ目は相手の要求が最適だと思い込まず、目的を踏まえてより良い提案も添えること。3つ目はシンプルに質を上げることです。
改善ありきとマシュマロチャレンジ
質を上げるには、いきなり完璧を目指すより、少しずつ修正を重ねて方向性をすり合わせる方が、結果的に早く質も高くなります。上司に資料を頼まれたとき、完成品をいきなり見せて方向性が違えば一からやり直しになります。骨組みや下書きの段階で確認してもらう方が、大どんでん返しを避けられます。
これを示すのがマシュマロチャレンジという実験です。スパゲッティ20本・テープ・紐・マシュマロ1個で、制限時間内にできるだけ高い塔を作ります。MBAホルダーなどのチームより、幼稚園児チームの成績が一番良かったそうです。頭のいい人が計算してから作ると、途中で崩れたときに時間が足りなくなります。
一方で幼稚園児は、とにかくやってみて、ダメなら次はこうしようと試行錯誤を繰り返します。ここからわかるのは、たくさん考えるよりも、なるべく早く失敗を重ねた方が効率的だということです。まさに改善ありきの考え方で、こねくり回さず「とりあえずやってみよう」の精神が大切です。
前半のまとめと見た目を整えるメリット・損
前半のまとめです。デザイン思考は選ばれるためのマインドセットで、相手目線・柔軟な発想・改善ありきの3つが活きます。選ばれるには安心感と満足感が必要で、そこでデザイン思考が大活躍します。
見た目を整えるメリットは大きく4つあります。1つ目は安心感を自分で示せること、2つ目はスキルや与えたい印象を正しく伝えられること、3つ目はブランディングができ一貫した印象づけがしやすいこと、4つ目は自分で作るときもAIや外注に依頼するときもデザインの判断ができるようになることです。
反対に見た目で損することも4つあります。誤解されて機会損失につながること、伝えたいことが伝わらないこと、読みづらい文章などで相手に負担を与えること、そして双方の手間が増えることです。しっかり書いたのに読んでもらえない、質問に一部しか答えてもらえないといったことも、見た目が整っていないせいで起こります。
SNSアイコンと投稿の良い例・悪い例
SNSアイコンは第一印象を大きく左右します。いまいちな例は、暗い自撮りで即席感やプライベート感が出ているもの、名前が読みづらい漢字のもの、加工アプリの画像を切り抜いただけのもので、手抜き感や不安につながります。トマトの写真も、小さく表示されると赤と緑のつぶつぶがいちごに見えかねないので、大きく写すなどの工夫が必要です。
良い例は、爽やかで健康トレーナーらしさが伝わる写真、呼びやすいひらがなの名前、黄色い背景に赤いキャラクターで印象に残るイラスト、帽子とトマトで属性がパッと伝わる農家のイラストなどです。基本は人物が写っている方が信頼につながりますが、顔出ししたくない場合はアイコニックで目立つイラストも有効です。
投稿の悪い例では、緑のパスタに濃いピンクの文字を重ねて日付が読めなかったり、白いお皿に白文字を載せて見づらかったりします。濃い色に濃い影を重ねる、白背景に明るい黄色の文字を載せるといった明度差のない配色は読みづらく、公式感が失われて不審感につながります。
プレゼン資料と身なりの注意点
プレゼン資料でよくある失敗は、色を使いすぎて目がチカチカすること、赤文字が多すぎてどこが大事かわからなくなることです。目立たせたい部分が多すぎると、結局どれも目立ちません。赤い背景に黒い文字のように、どちらも暗い色を重ねるのも読みづらくなります。修正するなら、色数を絞って同系色(暖色など)にまとめ、赤字を減らし、マーカーには明るい黄色や淡い色を使います。
文章も一行が長すぎると、折り返して戻ったときにどの行かわからなくなります。一文は適正な長さにして折り返し、資料なら段落を分けると読みやすくなります。
身なりについては、プレゼンの主役はあくまで内容です。濃いピンクのネクタイのように奇抜なものは視界のノイズになるので控えた方が無難です。ヒゲの有無だけでもフレッシュさや威厳といった印象が変わります。どんな印象を与えたいかを意識し、それに合わせた身なりにしないと、意図しない評価を受けることがあります。
テキストコミュニケーションと書類作成
同じ内容でも、長文で情報を詰め込んだメッセージは読みづらく、後回しにされがちです。返しやすいのは、冒頭に「以下3点のご確認をお願いします」と結論を置き、確認内容を箇条書きでナンバリングしたメッセージです。番号を振ると、相手は「1番はこれで」と省略して答えられるので、答えやすくなります。これも相手目線の思いやりです。
書類作成でも同じです。提出書類のマニュアルなら、提出期限を冒頭に置き、提出する書類3種類を箇条書きでまとめた方がパッと把握できます。こうした資料は相手が仕事の合間に受け取るため、期限が最初にわかると、後回しにするか今すぐやるかの判断がすぐにできます。結果として提出漏れも減り、回収する側も助かります。
AI時代に求められる言語化力
後半の最後のテーマは、AI時代に求められる言語化力です。昨年はデザインの言語化は講師ができていれば十分と考えていましたが、それだけでは受講生自身の言語化力は身につきません。AIの進歩は早く、覚えたやり方がすぐ変わってしまうこともあります。
それでも、最終的なデザインの判断や細かい修正の方向づけは、これからも人間の役割として残ります。デザイナーは作り手ではなくディレクションをする役割が求められ、そこで生きるのが言語化力です。どういう理由でこうなるかがわかっていないと、最適解も修正指示も出せません。誰でもデザインできる時代だからこそ、デザインを言語化する力は重宝されます。
そこで身につけてほしいことが2つあります。1つ目はデザインの目を養うこと、2つ目は自分のトンマナ(トーン&マナー)を作ることです。
デザインの目を養う方法
デザインの目を養うコツは、センスで片付けずに因果関係を考えることです。なぜその色やフォントを選ぶのか、何が印象に影響するのかを繰り返し考えると、デザインを見る解像度が上がります。すると「なんとなく良い/イマイチ」ではなく、フォントが個性的、配色に統一感があるといった細かい要素で見られるようになり、違和感や改善点にも気づけるようになります。
具体的には、好きなデザインやいまいちなデザインを集め、なぜそう感じるのかを言語化することを繰り返します。テーマは何でもよく、手書きフォントやイラストなど着眼点を絞ると共通点が見えてきます。ちふねこさんも会社員時代、出勤後の最初の10分でお題を決めてデザインを集め、考察を上司に送ることを1年続けて目を養ったそうです。
参考デザインの探し方は、PinterestやInstagram・Xなどのほか、ムーオルグ、サムネ、フライヤーアーカイブJPといったギャラリーサイトが便利です。いまいちな例は整ったギャラリーサイトでは見つかりにくいので、街の掲示板、電車の広告、個人経営のお店の発信、ポスティングのチラシなどが役立ちます。書店で平積みの本の表紙を眺め、なぜこれに目が行ったのかを考えるのもおすすめです。
自分のトンマナを作る・全体まとめ
トンマナ(トーン&マナー)とは、与えたい印象や世界観を統一するためのデザインルールです。色・フォント・余白などの基準を決めておくと、SNS投稿・紙袋・ショップカード・バナーがバラバラにならず、同じブランドだと伝わります。トンマナがないと媒体ごとにテイストが変わり、ユーザーが混乱して印象にも残りづらくなります。
作り方は難しくありません。まず誰に何を伝え、どんな印象を与えたいかという目的を言語化し、そのキーワードから参考画像を集めます。集めた画像に共通する色や雰囲気を、色・フォント・余白に落とし込んでルール化します。これができると自分のブランディングに使えるほか、しゅうへいが触れていたマークダウン(.md)のデザイン指示書としてAIに渡せば、同じ世界観の制作物を安定して作れます。
全体のまとめです。デザイン思考は選ばれるためのマインドセットで、相手目線・柔軟な発想・改善ありきの3つが活きます。選ばれるには安心感と満足感が大事で、デザイン思考と見た目を整えるスキルが役立ちます。さらにAI時代は言語化力で差がつくため、デザインの目を養い、自分のトンマナを作ることが必要になります。
第1回の課題(PRポイントとデザイン収集)
全6回の課題を通して、自分のPR画像を作っていきます。第1回の課題は2つです。1つ目は、Canvaで自分のPRポイントを箇条書きにまとめること。肩書き・趣味・仕事・得意なこと・価値観など何でもよいので、10個以上書き出してください。画像サイズはX投稿用の横長で、まとめ方はシンプルでOK(白背景に黒文字でも問題ありません)。次回以降のPR画像の原稿の元になります。
2つ目は、お題のデザインを集めることです。「美味しそうな飲食系のデザイン」と「いまいちそそられない飲食系のデザイン」を、それぞれ5個ずつ集めます。チラシ・ポスター・SNS投稿・スクショなど何でもよく、集めた画像に対して、共通点やなぜそう感じるかを言語化して一言添えてください。
まとめ方は、課題1で作ったCanvaデータに2ページ目以降を追加して、集めた画像と感じたことのテキストを載せます。提出はCanvaの共有リンクで行い、共有設定は「リンクを知っている全員がコメント可」にしてから、Google Classroomでリンクを提出してください。Canvaは無料で使えるデザインツールで、フォントや素材が豊富、テンプレートもあり、操作はパソコンがおすすめです。